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じっかの庭に、鶏頭がうわっていて、

いま花ざかり。ほんとに赤い。


つやつやと、秋の日ざしに照っていて、

見るたび胸に火がつく。


けして、おだやかでないもの。

鮮烈な火をいただいて、

この世になにか言おうとしている。


花はこわい。

とくに、赤いの、白いの。


赤いのは、かなしみや嘆きやいかりや、

そういうのの極みに、発火したんだとおもう。

それで、自浄してゆくの。

すべて熱くもして、とかして、

やわらかな灰にする。


じぶんの中のどうしようもないものが、

鶏頭として、庭さきにひょいと咲く。

お蔭でわたしは、もうほんとに深く、

なぐさめられるんだ。



「表現」なんてことさらにしなくても、

いつだって、

この世界はわたしを知り抜いて、あらわしてくれる。


「理解」なんていう手つづきなんかじゃなくて、

もっと直に。その、ままに。

わたしは花に通じているとおもう。


でも、花は花。

わたしはわたしでもあるので。


「ありがとう、お世話になります。」とおもう。



鶏頭。その烈火の花よ。

狭小なるわれを燃せ。

いくたびも。

また、いくたびも。





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このごろ、まいにち病院にかよっています。

毎日、毎日、せっせと、バスにのって。

こんな生活は、はじめてのこと。

だんだんと、ひとつの居場所みたよになってきています。


見舞うひとは、ねむっていることが多くて、

必然わたしは、その懸命な寝息を、ただひたすらに見ていることになる。

ねむる、ねむる。

ねむる、ねむる。

こんなにも、ねむる。

看護婦さんは、「退屈しない?」って気遣ってくれるけれど。

わたしちっとも飽かない。

むしろ、

おどろいている。

ねむっている人のそばにいると、

こんなに落ちつくんだということに。


ねむっている人は、

その寝息によって、

あたり一帯をみずうみにしてしまう。

そばによって見つめたなら、

安らかな水がとぷとぷと足もとをぬらし、

しだい水底にここちよくしずんで、

わたしたちもまた、ゆらゆらと、たゆたうようになる。


水にねむる。

じぶんの為だけではなくて、みんなのために。

わたしたちはもっと、ねむらなくちゃ。


そんなことを、思ったりしている、今日このごろです。








「対面式キッチン」というのは、たのしい。
みんなの様子みながら、お料理、皿あらい。
そこにはおしゃべりがあって、笑がおがある。
そこは、みんなで円くかこむ食卓の、円弧の一ぶ。
いえいえ、むしろ、
かつての囲炉裏みたよに、輪/和/話の中心なのかもしれません。

でも、
わたしの母や祖母の台どころは、そうじゃなかったから。
わたしはいっつも、母や祖母の背なかをみてた。

黙々と。
ひとりで。

野菜にふれ、米にふれ、
刃にふれ、火にふれ、
ことこと、ふつふつ。
ぐらぐら、じゅうじゅう。

あぁ、その背なかの、
充実しきっていたこと!

母はたのしそうだった。
祖母もまた、そうだ。

黙々と。
ひとりで。

小さな背なかを、
しずかな悦びでいっぱいにしながら。

わたしは、ふたりの背なかをじっと見てそだったから。
どうしようもなく、お料理がすきになった。

台どころにある背なかは、
ほんとはきっと何より饒舌に、
お料理のたのしさや家族への愛のふかさを、
わたしたちにかたってくれる。

わたしの背なかも、
あんなふうになりたい。

このごろそんな目標ができて、
台どころに立つのがますますうれしくなった。







秋。
あき。
実りの、音。

飽く。
もう、じゅうぶん。
というほどに、満ちる。
満ち、たりる。

波の穂を伝い、
「あき」が、
この世にふきわたってゆく。


写真。
先日、赤目自然農塾でお会いした方が、
おくってくださいました。

あぁ、うれしい。
ありがとうございます。

おとといの夕ぐれのこと。
西のそらに、瑞雲をみつけた。

両てのひらにすくえるほどの、
ほんのちいさな虹の雲。

それは、
固く、むずかしくなっていた
むねのあたりを、
解き、しずめてくれた。

秋のそらの清涼。
そこにうかぶ、かすかな虹。

そのまま、
そのまま、
胸に、移れ。

そのまま、
そのまま、
この胸に、なれ。

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